日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
健常若年者, 健常老年者およびアルツハイマー型老年痴呆患者 (SDAT) における Thyrotropin-releasing hormone (TRH) 負荷に対するTSHの反応
藤田 素樹
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1987 年 24 巻 3 号 p. 265-271

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抄録

加齢に伴い, 視床下部-下垂体-甲状腺系の機能に変化が起こることが知られており, 高齢者における Thyrotropin-releasing hormone (TRH) 負荷試験の報告は数多く見られる. しかし, 病的老化現象である痴呆患者におけるTRH負荷試験の報告は極めて少ない. そこで筆者は健常若年者 (若年群) 11名, 60歳以上の非痴呆健常老人 (老年群) 16名およびアルツハイマー型老年痴呆患者 (SDAT) 32名に早朝空腹時TRH-タナベ500μgを静注負荷し, 負荷前および負荷後30分, 60分, 120分に採血して血漿TSH値を測定した. 血漿TSH値を追跡した. TSHは2抗体法のラジオイムノアッセイのキットを用いて測定した.
その結果,
1. 若年群, 老年群, SDAT群ともに負荷後の反応は男性より女性の方が高反応を示した.
2. TRH負荷後, 若年群は基礎値3.3±0.2μU/ml (mean±SE) が12.7±2.2μU/mlに, 老人群は基礎値4.7±0.5μU/mlが21.0±2.4μU/mlに, SDAT群は基礎値4.1±0.4μU/mlが18.4±1.7μU/mlに上昇した. 基礎値では各群間に有意の差はみられなかったが, 老年群は若年群よりも高反応を示し, SDAT群は老人群とほぼ同様の成績であった.
3. SDAT群ではΔmax TSHが5μU/ml未満のTSH低反応が4名, 負荷後60分以降に最高値が出現する遅延反応が16名に見られた.
以上の成績を神経内分泌学的見地より考察し, 生理的老化と病的老化 (SDAT) の差異についても検討した.

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