日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
老年者糖尿病のコントロール指標としての朝食前および朝食後血糖値の臨床的意義
HbA1よりの検討
大庭 建三春山 勝南 順文中野 博司山下 直博渕上 正章高尾 嘉興野崎 太矩祠志賀 幸雄妻鳥 昌平盤若 博司
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1987 年 24 巻 6 号 p. 532-537

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抄録
老年糖尿病患者の血糖コントロールの指標としての朝食前血糖値 (FPG) および朝食後2~3時間血糖値 (PPG) の信頼性が若壮年者と同一であるか否かを検討する目的で, 外来受診中の血糖コントロールの比較的安定しているインスリン非依存型糖尿病患者 (NIDDM) の頻回に測定したFPGおよびPPGをHbA1およびHbA1C値の面より検討した. FPGおよびPPGとその4, 8および12週間後のHbA1およびHbA1C値とは全て有意の正の相関を認めたが, 食事療法群および薬物療法群 (経口血糖降下剤およびインスリン治療) のいずれも4週後との相関が最も良好であった. そこで, 4週間後のHbA1およびHbA1C値との相関関係を年代別, 治療法別に検討したところ, 老年群 (60歳以上) のPPGの相関係数は, 食事および薬物療法群のいずれも, 老年群のFPGや若壮年群のFPGおよびPPGに比し有意に低値であった. ついで, HbA1値を1%ごとの層別に分け, その各々の群の平均血糖値とその分散を老年群と若壮年群で比較した. FPGの両値には全群で差がなかったが, PPGは食事療法群の6, 7%台, 薬物療法群の6, 7, 8%台で, いずれも老年群が若壮年群に比して有意に高値であった. 以上から, 老年群のPPGの相関係数の低値は, 比較的コントロールの良好な範囲でHbA1値に対するPPGのばらつきが若壮年群に比較して大きいことが主なる要因と考えられた. そこで, 3~6カ月間に連続3回測定したHbA1値が9%未満かつその変動幅が0.2%未満と血糖コントロールの極めて安定していた例の各々1カ月前のPPGの変動係数を若壮年群と老年群で比較したところ, その平均値に有意の差はなかった. 以上の成績は, 老年NIDDM患者のPPGは, FPGや若壮年者のFPGおよびPPGに較べるとその高さに個人差が大きく, 血糖コントロールの指標としての信頼性が低いことを示しており, 臨床上留意すべき事実と考えられた.
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© 社団法人 日本老年医学会
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