1988 年 25 巻 4 号 p. 424-429
症例は32歳, 女性. 理学所見上, (1)低身長 (141cm), (2)尖鼻, 小下顎症のため鳥様顔貌を呈し, (3)顔面・頚部皮膚に皺が多く, (4)四肢末梢優位, 特に手足の著明な皮膚萎縮がみられ, (5)全身の浅在静脈が外表より明瞭に透見され, (6)手指足趾とも爪甲は小さく, 両側拇趾は爪甲鉤弯症を呈し, (7)下腿には数カ所瘢痕がみられ, (8)頭髪は黒色でやや疎, 腋毛はなく陰毛も疎であった. 既往歴では, 30歳時, 分娩中子宮破裂を発症したが, 死亡した胎児の外表面上に特別な異常は認めなかった. 家族歴では, 母方の祖父母が血族結婚であり, 母親は本症例と同様の身体所見を呈していたため Werner 症候群と診断されていた. 本症例の一般臨床検査所見には特に異常を認めなかったが, X線上脊椎後弯症と軽度の骨粗鬆症を呈していた. 本症例は Werner 症候群と類似しているが, 白髪・禿髪, 白内障, 耐糖能障害等は呈しておらず, 典型的な Acrogeria と考えられた. なお, 臨床上いかなる内臓の病的変化も考えられなかったが, 少くとも子宮組織は正常であることが病理学的に明らかとなった.