25 巻 (1988) 6 号 p. 569-575
脳血管性痴呆患者32名 (72±11歳) (De (+) 群) と痴呆を認めない多発性脳梗塞患者27名 (74±9歳) (De (-) 群) において, CT, MRI, SPECT (123IMP) を用いて, 病巣の分布, 血流動態を検討した. 痴呆の評価には, DSM IIIの基準を採用し, 実際には長谷川式スケールおよび“Mini-Mental State”日本語訳を適用し, 両者のいずれかが10点以下の例をDe (+) 群, 同22点以上をDe (-) 群とした. その中間の点数を示す例は検討から除外した. 血管性痴呆の診断には, Hachinski score 7点以上を原則とし, その他CT, MRI所見を参考とした. また比較参考例として2例の Alzheimer 型老年痴呆を検討に加えた. その結果, 脳血管性痴呆は, 脳病変部位特異性を有する群 (De(+)-I群) と責任病巣を特定できない多発梗塞性痴呆 (De(+)-II群) に分類し得た. 前者における特殊な部位として, 左視床, 左前部帯状回, 左または右後大脳動脈領域, 左中・後大脳動脈境界領域および temporal stem などの大脳辺縁系ないしそれと深く関連した部位があげられた. これらの病変は, CTでは孤発性病巣として認められたがMRIでは多発性の小梗塞を伴っており, またSPECTでより広範な血流低下が示唆された. 責任病巣を特定できない multi-lacunae を認めた De(+)-II群とDe(-)群におけるSPECTの比較では, De(-)群に比してDe(+)-II群で前頭葉の血流低下を認める所見が有意に高かった. Alzheimer 型老年痴呆では頭頂・後頭葉・側頭葉の血流低下を認めた. 脳血管性痴呆発症の背景には脳血流の低下が基盤にあり, その期間や程度と, かつ梗塞の生ずる部位特異性も重要な因子を形成すると考えられた.