発症後24時間以内に当院へ入院した高血圧性被殻出血32例を, 退院時の転帰より独歩可能な11例をA群, 杖歩行9例および車椅子2例の合計11例をB群, そして, 血腫除去術が施行された6例に死亡例4例を加えた10例をC群に分類した. これら3群における急性期での病態生理および網膜, 心,腎での高血圧性臓器障害の程度などにつき比較検討を行い, 高血圧性脳出血の予後を規定する因子への解明を試みた. さらに, 32例中10例では血腫体積, 1日平均血圧, 1日尿中カテコールアミン排泄量の各間における相関の有無につき検討を加えた.
平均年齢はA群61.4±8.1歳, B群58.0±11.3歳, C群52.4±6.8歳であり3群中C群で最も若かった. C群では, 入院時 (第1病日) の血腫体積は50.2±28.2mlとA群の19.5±8.8ml, B群の25.1±12.6mlと比べ有意に大であり (p<0.01 vs A群, p<0.05 vs B群), 入院翌日 (第2病日) には98.4±39.5mlと有意な血腫増大がみられた (p<0.01). 同群では, 第1病日での平均血圧は他の2群と比べて高く, 第2病日にはその平均収縮期圧は上昇傾向を示し, A, B両群との間に有意差を認めた (p<0.05 vs A群, p<0.01 vs B群). 血液生化学および血液凝固学的検査値, 高血圧性臓器障害の程度には3群間で差を認めなかった. 血腫体積は各血圧の平均値および尿中カテコールアミン排泄量との間に相関を示さなかった. しかし, 1日尿中ノルアドレナリン排泄量と平均収縮期圧との間には良好な正の相関がみられた (r=0.735, p<0.05).
以上より, 入院時に50ml以上の血腫量を有するもの, あるいは, 入院時より血圧の高値が持続するものでは, 入院後に著しい血腫増大をきたす危険性が高く, これらの症例では交感神経機能の亢進状態にあるものと思われた. なお, 高血圧の重症度と血腫の進展度には相関は認めなかった.