日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
老年者のADL評価法に関する研究
江藤 文夫田中 正則千島 亮五十嵐 雅哉溝口 環和田 博夫飯島 節
著者情報
ジャーナル フリー

1992 年 29 巻 11 号 p. 841-848

詳細
抄録

日常生活動作・活動 (ADL: Activities of daily living) の評価に関して, 老年者一般に適用しうることを目的として, 評価法試案 (ADL-20) を作成し, 大学病院対象110例, 長期入院・入所施設対象106例の合計216例 (男性77例, 女性139例, 平均年齢76.2歳) に施行して, その信頼性, 妥当性, 有用性について検討した. 本評価法は下位領域として基本的ADL (BADL), 手段的ADL (IADL), コミュニケーションADL (CADL) を含む20項目からなり, それぞれ能力を完全自立(3)~全介助(0)までの4段階に分類評価した. 信頼性に関して, 40例について異なる評価者 (医師と理学療法士) による同時評価の一致率を検討した. 全体での完全一致率は85.6%で, 項目毎には70.0~97.5%であり, 一致性の指標としての kappa 係数は0.52~0.88に分布した. 医師と理学療法士間の成績の相関係数は0.97であった. 各項目の内的整合性に関する Cronbach のα係数は0.97と極めて高いものであった. 妥当性に関して, ADL評価法として臨床的有用性が認められている Barthel Index, Katz Index との比較 (大学病院対象110例) で高度の相関が示された. また, 介護ニーズを7段階に分類し, 精神機能障害を4段階に分類し, 本評価法との相関を検討した. 介護ニーズとの相関係数は項目毎あるいは下位領域群よりも総得点において最も相関が高く, 下位領域群ではIADLとの相関が最も高度に認められた. また精神機能評価との相関も高く, とくにIADL項目における相関係数が大であった. 以上の結果から本評価法は身体, 精神機能を含めた老年者の総合的障害を反映したADLの評価法として十分満足な信頼性と妥当性を有すると考えられ, 介護ニーズや精神機能の指標としても有用性が期待される.

著者関連情報
© 社団法人 日本老年医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top