34 巻 (1997) 12 号 p. 1004-1008
1995年にバルーンカテーテルにより排尿管理を受けていた高齢者517名の尿中分離細菌につき調査し, 1982年, 1987年, 1993年に行った同様の調査結果と比較検討した. 1995年の尿中分離細菌は, D群-Enterococcus, Providencia rettgeri, Escherichia coli, Pseudomonas aeruginosa, Proteus mirabilis の順で多かった. 年次的変遷としては, カテーテル留置により排尿管理された患者では, 単純性尿路感染症の起炎菌と異なり, 各年を通じて Proteus 属及び Providencia 属の感染が圧倒的に多いが, 近年やや減少傾向にある. 一方, Pseudomonas 属の感染は増加傾向にあり, Staphylococcus 属 (特にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌: methicilin-resistant Staphylococcus aureus: MRSA) は一時増加し, 現在ほぼ横ばいの傾向にある. さらに, Enterococcus 属が近年急増しており, この原因としてセフェム系抗生剤の繁用および糞便による汚染が考えられる. カテーテル留置下の寝たきり高齢者においては, 個々の患者の排尿障害の病態をよく把握してできる限り長期カテーテル留置を避けることが重要であるが, 止むを得ず留置する際には局所的感染予防, 尿路感染症急性増悪にそなえた尿中細菌検索および急性期の適切な抗菌剤の選択が重要である.