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日本老年医学会雑誌
Vol. 35 (1998) No. 10 P 735-740

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http://doi.org/10.3143/geriatrics.35.735


目的: 高齢者における心原性脳塞栓症の病態を明らかにし, 適切な治療方針を探ることを目的として, 当センターに入院した心原性脳塞栓症例の年齢別解析を試みた.
方法: 対象は当センターに発症7日以内に入院した心原性脳塞栓症連続120例 (男性77例, 女性43例, 65±13歳) である. 対象を非老年期 (64歳以下, 57例), 老年前期 (65~74歳, 30例) および老年後期 (75歳以上, 33例) に分け, 基礎心疾患, 入院時神経脱落症候 (NIH Stroke Scale), 梗塞巣の大きさ, 抗凝血薬療法の有無と再発や出血性合併症との関連性, 入院中の合併症, 退院時ADL, 及び経過観察期間における再発や死亡の有無を調べた.
結果: 基礎心疾患は非老年期群ではリウマチ性弁膜症 (19例, 33.3%) が, 老年後期群では非弁膜性心房細動 (NVAF) (25例, 75.8%) が最も多かった. 老年後期群における入院時のNIH Stroke Scale (median 11点) と頭部CT上の最大径が3cm以上の梗塞を有する割合 (51.5%) は, ともに他群より高かった. 急性期 (発症14日以内) 抗凝血薬療法は非老年期群と老年前期群で7割以上に行われたが, 老年後期群では57.6%と少なかった. 急性期の再発は抗凝血薬療法非施行34例中4例 (11.8%), 施行86例中2例 (2.3%) にみられ, 非施行例で多い傾向であった (Chi square test, p=0.053). 老年期の2群で急性期抗凝血薬療法中の出血が2例, 他の合併症 (感染症や肺塞栓) が14例に見られたが, 非老年期群では見られなかった. 退院時に独歩もしくは杖歩行の症例は非老年期群 (78.9%) と比較し老年期の2群 (57.1%) では少なかった (Chi square test, p<0.01). 慢性期の抗凝血薬療法は非老年期群と老年前期群では8割以上に行われたが, 老年後期群では3割弱に行われたのみであった. 全経過観察期間中の再発もしくは死亡は, 明らかに老年後期群で多かった (Log rank test, p=0.0091).
結論: 高齢者における心原性脳塞栓症の特徴は, 基礎心疾患としてNVAFが多く, 再発や死亡率が高く予後不良である. その要因として, 発症時の神経脱落症状が重い, 梗塞巣が大きい, 入院中の合併症が多い, および急性期と慢性期における抗凝血薬療法施行率が低いことがあげられる. 従って, NVAFからの脳塞栓症の発症や再発の防止を目的とした抗凝血薬療法の適応や入院中の合併症への対策が必要と考えられた.

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