日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
超高齢者における変性型痴呆の神経病理学的研究
榎本 睦郎水谷 俊雄高崎 優山田 滋雄坂田 増弘
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1998 年 35 巻 5 号 p. 374-381

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抄録

臨床的にアルツハイマー型痴呆 (ATD) と診断された7例の超高齢者 (99~105歳) について神経病理学的検討を行った. その結果, 1) 側頭葉内側に限局性の皮質萎縮を認める症例と, 皮質萎縮が側頭薬のみならず大脳皮質においてびまん性に広がる症例とに分けられた. 萎縮した皮質には第2・3層を中心とする層状変性を認め, 層状変性はグリオーシスを伴う神経細胞脱落と基質の粗鬆化より構成されていた. 層状変性と肉眼的萎縮の程度は一致していた. 2) 限局性萎縮を呈する症例はアルツハイマー神経原線維性変化 (NFTs) が側頭葉内側の特に海馬CA1, subiculum, 海馬傍回に集中し, 極めて少量の老人斑 (SPs) が認められた4例 (Group 1) と, 大量のNFTsとSPsが広範に出現していた2例 (Group 2) とに分けられた. びまん性萎縮を認めた1例 (Group 3) のNFTsとSPsの分布は group 2とほぼ同様であった.
Group 2, 3は我々のATDの診断基準を満たし, それぞれ limbic type, neocortical type-ATDと考えられたが, Group 1は group 2, 3と同様に変層状性を認めたにもかかわらず, SPsとNFTsの量と分布がATDの病理学的診断基準を満たしていなかった. 以上のことから Group 1は典型的なATDとは異なる病理像を呈しており, 超高齢者に特異な点が注目された.

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