日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
在宅ケアにおける介護者の負担度と主観的幸福感に関する研究
川本 龍一岡本 憲省山田 明弘小国 孝
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1999 年 36 巻 1 号 p. 35-39

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抄録

近年, 老人人口およびそれに伴う長期臥床患者や独居老人の増加に伴い, 在宅ケアの必要性が急速に高まっている. そうした中, 在宅ケアにおける患者 (以下被介護者) の健康に関する把握は従来よりなされているが, それを看る介護者の健康に関わる環境要因の把握は未だ十分ではない. 核家族化や介護者自身の高齢化が目立つ状況下, 介護者の負担をいかに軽減できるかも在宅ケアを進めていく上で重要な要因と考えられる. そこで介護者の負担度と主観的幸福感を調査し, それに及ぼす影響因子について検討した. 対象は, 当院で訪問診療・看護を受けている高齢者あるいは長期臥床患者の家族で, 1年以上常に患者の介護にあたっている介護者20名である. 方法では, 介護者については年齢, 性別, 被介護者との続柄や人間関係, 副介護者・職業・趣味活動の有無, 健康状況, 介護期間, さらに抑うつスコア, 社会的支援度, 介護負担度, 主観的幸福感を調査し, 被介護者については年齢, 基礎疾患, ADLの程度を調査した. その結果, 介護者の負担度については, 介護者側では女性ほど (p<0.05), 被介護者との人間関係や自身の健康状況が良くないほど (各々p<0.05), また手段的支援ネットワークや情緒的支援ネットワークでの点数が低いほど (各々p<0.005, p<0.05) 大きくなり, 被介護者側では年齢が高いほど (p<0.05), ADLでは離床が困難であるほど (p<0.05) 大きかった. 介護者の主観的幸福感については, 副介護者がいるほど (p<0.005), 手段的支援ネットワークや情緒的支援ネットワークでの点数が高いほど (各々p<0.05) 大きくなり, ADLでは情報の理解が可能であるほど (p<0.05) 小さかった. 本調査により, 介護者の負担度を軽減し, 主観的幸福感を失わずに介護を続けていくには, その手段的・情緒的支援ネットワークの充実を計ることの重要性が示唆された.

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