日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
地域後期高齢者の主観的幸福感とその関連要因の性差
長田 篤山縣 然太朗中村 和彦宮村 季浩浅香 昭雄
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1999 年 36 巻 12 号 p. 868-873

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抄録

地域後期高齢者の主観的幸福感に関連する要因について, 男女別にみた場合の相違を検討するため, 山梨県塩山市の2地区に在住の75歳以上後期高齢者を対象に聞き取り調査を行った. 主観的幸福感を評価する尺度として改訂版PGCモラールスケール (The Philadelphia Geriatric Center Morale Scale) 17項目を用い, 家族の状況, 職業, 健康度指標, 日常生活行動および身体的検査項目に関する要因をそれぞれいくつかのカテゴリーに分け, Mann-Whitney 検定または Kruskal-Wallis 検定により全体と男女別に各群のPGCモラールスケール得点を比較した. 結果は以下のように要約される.
1) 男女別平均年齢は, 男性 (80.0±4.4歳), 女性(80.4±4.3歳) で有意差はなかったが, PGCモラールスケール得点は男性のほうが女性より有意に (p<0.05) 高く, 幸福感に性差が認められた.
2) 女性は多くの要因と関連がみられ, 特に健康度指標および日常生活行動に関する要因が幸福感と強い関連があることがわかった.
3) 男性は女性に比べ関連する要因は少なく,「つきあいの機会」,「趣味」と「握力」のみであった. 以上より, 主観的幸福感と関連する要因は性別によって異なり, 高齢者の主観的QOLを考える上で性差を考慮する必要性が示唆された.

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