日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
地域高齢者における主観的幸福感と家族とのコミニュケーションとの関連
岡本 和士
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2000 年 37 巻 2 号 p. 149-154

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抄録

地域に居住する高齢者の主観的幸福感とその関連要因を検討することを目的として, 愛知県大都市近郊の一地域に居住する65歳以上の高齢者863名 (男395名, 女472名) に対し, 主観的幸福感に関する質問項目や健康状態, 生活習慣及び心理的要因を含む自記式のアンケート調査を行った. 主観的幸福感は単一の質問項目にて調べた.「幸福と思う」者の割合は男71.4%, 女76.4%と女に高い傾向は認められたが有意差はなく, 年齢による差も認められなかった. 主観的幸福感に対する各要因との関連の程度をロジスチィック重回帰分析を用いて要因間の影響を補正し検討した結果,「健康度自己評価」「家族との会話」「社会的役割」「日常活動性」および「ソーシャルサポート」のオッズ比はいずれも1より大きくかつ有意であったが, とりわけ「家族との会話」のオッズ比が2.60 (95%信頼区間1.93~3.52) と最も高かった. また1より小でかつ有意なオッズ比を示した項目は「気分が落ち込む」「寂しさを感じる」であった. 主観的幸福感に対する「家族との会話」のオッズ比は他の要因に比し最も高く, 会話の頻度とともに増加を認めるとともに, それは前期高齢者群に比べ後期高齢者群で高かった. 高齢者における家族との会話は主観的幸福感を高める方向に作用する可能性が示された.

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