38 巻 (2001) 2 号 p. 185-192
痴呆性老人の精神・身体状況が施設入所後2年間にどのように変化したかを, 高齢者アセスメント表 (MDS) を用いて検討した. 対象は, 老人性痴呆疾患治療病棟に入所したアルツハイマー型痴呆55名および脳血管性痴呆25名である. MDSおよびミニメンタルステートによる評価は, 入所時と以後3ヶ月ごとに2年間行った.
入所時の問題領域選定状況を, 問題領域選定数が10以上の高ケアニーズ群とそれ以下の低ケアニーズ群に分けて検討したところ, 高ケアニーズ群で両病型の違いが顕著であった.「せん妄」,「コミョニケーション」,「問題行動」,「アクティビティ」,「ADL」,「脱水」,「向精神薬および身体抑制」の領域はいずれの病型でも高率に選定されていたが, アルツハイマー型痴呆ではそれ以外に「気分と落ち込み」と「口腔ケア」が, 脳血管性痴呆では「人間関係」,「尿失禁」,「転倒」および「栄養障害」が高率に選定されていた.
施設ケアを行い3カ月後に評価したところ, 上記すべての領域で選定率は著減した.
しかしその後の評価では, 選定領域数は徐々に増加し, その内容および進行過程には両病型で違いが見られた. アルツハイマー型痴呆では,「コミュニケーション」,「ADL」,「尿失禁」,「口腔ケア」,「栄養状態」および「転倒」の選定率が6カ月以降一様に漸増した. 一方, 脳血管性痴呆では,「コミュニケーション」,「視覚」および「尿失禁」の3領域のみで選定率が漸増したが, その進展過程は不規則であった.
痴呆性老人の精神・身体状況は, もとより痴呆病型により違いが見られるが, いずれも施設入所後早期に改善する. これは入所時の周辺精神症状がケアに反応して鎮静するためと考えられる. しかしその後は原疾患の進行とともに徐々に悪化する. その過程は痴呆病型により異なり, アルツハイマー型痴呆では疾病の緩徐な進行過程を反映し均一に進行するが, 脳血管性痴呆は進行に個人差が大きいためか, その過程は一律ではなかった.