日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
地域在宅高齢者における認知機能の縦断変化の関連要因
要介護予防のための包括的健診 (「お達者健診」) についての研究
岩佐 一鈴木 隆雄吉田 祐子權 珍嬉吉田 英世金 憲経杉浦 美穂古名 丈人
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2006 年 43 巻 6 号 p. 773-780

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抄録

目的:地域在宅高齢者における認知機能の縦断変化の実態把握ならびにその関連要因の探索を目的とした. 方法: 地域在宅高齢者を対象として実施した包括的健診 (「お達者健診」) におけるベースライン調査, 2年後の追跡調査の両方に参加し, データが完備した者482名 (男性260名, 女性222名, ベースライン調査時点における年齢範囲70歳~84歳) を分析の対象とした. 目的変数として「認知機能の縦断変化」(追跡調査時点における Mini-Mental State Examination [MMSE]総得点からベースライン調査時点におけるそれを減じて算出した; 正の値は2年間におけるMMSE得点の上昇を, 負の値はその低下を示す) を, 説明変数としてベースライン調査時点における年齢, 教育歴, 聴覚機能障害, 視覚機能障害, 高次生活機能障害, 記憶愁訴, 一人暮らし, 血色素量を, 調整変数としてベースライン調査時点におけるMMSE総得点, うつ傾向, 高血圧・脳卒中・糖尿病既往を, それぞれ医学検診ならびに面接聞き取り調査において測定した. 結果: 重回帰分析を性別に行った結果, 男性では, 年齢 (標準偏回帰係数 (β)=-0.18), 聴覚機能障害 (β=-0.21), 高次生活機能障害 (β=-0.15), 記憶愁訴 (β=-0.20) において, 女性では, 年齢 (β=-0.27), 低教育歴 (β=-0.25), 血色素量 (β=0.16) においてそれぞれ認知機能の縦断変化に対する有意な寄与が交絡因子の影響を調整してもなお認められた. 結論: 男性では, 年齢が高い者ほど, 聴覚機能障害が有る者ほど, 高次生活機能障害が有る者ほど, 記憶愁訴が有る者ほど, 女性では, 年齢が高い者ほど, 教育歴が低い者ほど, 血色素量が低い者ほど, 認知機能が低下することが示された. これらの関連要因は, 地域在宅高齢者における認知機能低下の早期発見に有用であることが示唆された.

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