損害保険研究
Online ISSN : 2434-060X
Print ISSN : 0287-6337
<研究論文>
クレジット・デリバティブ取引に対する保険契約法・保険監督法の適用可能性の検討
嘉村 雄司
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2014 年 76 巻 2 号 p. 1-30

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抄録

 保険法学説では,保険とクレジット・デリバティブ取引の法的区別が問題とされてきた。これまでに,損害てん補の目的の有無あるいは保険技術の利用の有無という基準が主張されている。これらの基準により,保険とクレジット・デリバティブ取引の法的区別の問題は,解決されてしまったもののようにもみえる。

 しかし,クレジット・デリバティブ取引の実態に鑑みると,損害てん補の目的あるいは保険技術の利用といった要素を具備する取引が存在していることを否定できないと思われる。そうすると,「クレジット・デリバティブ取引の一部は保険の要素を具備している」と解することも可能ではないのかとの疑問が浮上する。

 この点,現在のアメリカでは,従来提唱されていた基準を再構築する試みが始まっており,その妥当範囲の限界が指摘されるに至っている。そこで,本稿では,このようなアメリカの議論を参照しつつ,上記のような基準の妥当範囲の限界を明らかにすることとしたい。

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