損害保険研究
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<研究ノート>
D&O保険の免責条項解釈と告知の分離条項
山越 誠司
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2016 年 78 巻 2 号 p. 113-137

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抄録

 被保険者が保険保護を確保できるかどうかの重要論点に免責の分離条項と告知の分離条項があるが,なぜかわが国の現場ではあまり議論されることがなかった。しかし「コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会」報告書においてD & O保険の7つの提言ポイントのうちの一つとして問題提起されたことを端緒として,今後,より深い議論がなされると思われる。  そして,免責条項に関しては行為免責の分離条項の必要性と被保険者にとっての確定判決免責の有用性が確認されるべきである。また,告知の分離条項に関しては,アメリカの実務の運用とイギリスの複合保険の理論をわが国にも導入すべきと思われる。  このように,理論的整合性と現実的妥当性の狭間でD & O保険の実務を成熟させるためには,すでに,アメリカやイギリスで採用されている規定や解釈をわが国に適合する形で採用することが重要と思われることを確認する。

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