2016 年 78 巻 3 号 p. 1-25
生産物賠償責任保険ビジネスリスク免責の適用が争われた事例の判決が平成26年に出されており,これに関する判例研究がある。本稿では,この事例を手がかりに日米における性能・品質関連ビジネスリスク免責のあり方を考察する。結論として,米国の課題は,修復可能か否かの判断基準が約款において示されていないことであるが,その対応策は簡単ではない。日本の課題は,生産物賠償責任保険も,米国約款ならびに外資系損保が日本で販売する英文約款同様に,財物の使用不能損害を補償対象に追加すべきであり,そのうえで,ビジネスリスクに当たる減損財物および非損傷財物の使用不能損害を免責とすべく,減損財物免責に相当する免責条項を生産物特別約款に盛り込むべきである。また,日本では保険法対応約款改訂後の新約款で完成品の財物損壊および使用不能損害を全面的に免責としているが,ビジネスリスク免責としては行き過ぎであり,減損財物免責に相当する免責範囲に縮小すべきである。さらに身体障害にも適用される効能不発揮免責は各社で免責範囲が異なるが,これも妥当な範囲に縮小すべきであり,かつ統一が望まれる。