損害保険研究
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<論文>
イギリス海上保険法上の因果関係の問題点再考
—近因原則の展開と方向性をめぐって—
平澤 敦
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2017 年 79 巻 1 号 p. 59-104

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抄録

 本稿は,イギリス海上保険法における因果関係論につき,改めて整理し,再考したものである。

 イギリス海上保険法における様々な問題は,過去から現在に至る膨大な判例の蓄積の中で1つ1つクリアされてきた。その中でも争点の大半は,保険者のてん補責任を巡る問題であって,その有無を画定する際に海上危険と損害の因果関係がきわめて重要となる。イギリス海上保険法における因果関係の問題は,複雑多岐にわたるが,因果関係においては近因原則が適用され,損害に対して,効果においてもっとも近接な原因を近因とすることについてはコンセンサスが得られている。ただし,近因の検証については,未だに決着しておらず,common senseを適用することが現時点でのベストとなっている。

 近因原則とは何か。本稿では,同時協働的近因の問題,因果関係を表す様々な表現,さらにはcommon senseの功罪という点を中心として,この問題を明らかにしていく。

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