損害保険研究
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<論文>
船舶保険における共同被保険者の保険金請求権について
—不真正連帯債務を裏付けとする連帯債権—
藤井 卓治
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2018 年 79 巻 4 号 p. 39-70

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抄録

 外航船の船舶保険において,保険契約者である船舶所有者(または裸傭船者)が船舶管理者などを含む複数の者を共同被保険者に追加することが多いが,その場合に,各共同被保険者に帰属する保険金請求権の競合ないし対立が問題となる。保険証券上に保険契約者=船舶所有者(または裸傭船者)を保険金支払先として明記することで問題は解決すると思われるが,保険法8条は保険契約者によって指定された被保険者には保険金請求権が帰属する旨を定め,同12条が被保険者に不利な特約を無効とする旨を定めているため,この方式が他の共同被保険者に不利にならないかを検討する必要がある。保険契約者が船舶管理者等の者を共同被保険者に追加する主な理由は「共同被保険者の法理」によってこれらの者が保険者から代位求償される可能性を排除することであって,彼らが自ら保険金請求権を行使することは想定されていない。船舶保険における保険金は,全損金以外はすべて費用保険金または責任保険金であり,これらについての保険金請求権は船舶の運航・管理に関与する者の不真正連帯債務を裏付けとする連帯債権である。被保険者のうちの任意の1名による保険金請求権の行使(それによる債務の履行)は,他の被保険者の債務を消滅させるため,保険金請求権の行使を保険契約者に集中させることが他の共同被保険者の不利になることはない。

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