痛風と核酸代謝
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原著 2
湯煎および電子レンジ加熱調理による食品中のプリン体含量の変動
福内 友子岩崎 円香山岡 法子金子 希代子
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2018 年 42 巻 2 号 p. 165-172

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抄録

患者の食事指導に役立てるため,これまで当研究室では日常的に食される多くの食品中のプリン体含量を測定し報告してきた.食品は生で食べるものを除き,多くの場合何らかの熱処理により調理され食されている.本研究ではプリン体(ヌクレオチド,ヌクレオシド,塩基)一斉分析法を用いて,食品に含まれるプリン体,特に旨味成分であるイノシン酸(IMP)・グアニル酸(GMP)の分解について,湯煎および電子レンジによる加熱温度・加熱時間・加熱方法の違いに着目し分析を試みた.食品試料として,IMPを多く含む鶏がらスープの素と鶏もも肉,GMPを多く含む乾燥しいたけを用いた.プリン体一斉分析の結果,鶏がらスープ中には,ヒポキサンチン(HX)類であるIMP,HX,イノシン(Ino)が多く含まれ,沸騰水(約100℃)の湯煎での加熱は,それ以下の温度と比較してほぼすべてのプリン体量が有意に上昇し,60分加熱し続けてもプリン体量に変化は認められなかった.電子レンジによる加熱との違いについて検討すると,鶏がらスープの素に含まれる核酸系旨味成分であるIMP,GMPは電子レンジより湯煎での加熱の方が分解しにくいことが示された.次に,鶏もも肉からの溶出を検討した結果,湯煎より電子レンジでの加熱の方がすべてのプリン体が多く溶出した.また,鶏もも肉を水にさらしたのみでも,アデニン類(ATP, ADP, AMP, アデノシン, アデニン)やグアニン類(GTP, GDP, GMP, グアノシン,グアニン)は溶出しなかったが,HX類は溶出した.さらに鶏もも肉中のプリン体と肉片から溶出したプリン体を塩基の量で比較すると,アデニン,グアニンは肉片中の1/10程度の溶出だったが,HXは湯煎で60%,電子レンジではほぼ100%溶出した.乾燥しいたけからは,どちらの方法も時間依存的に全てのプリン体が溶出液中で上昇したが,電子レンジの方が加熱後短時間で溶出し,また,分解しにくく,溶出液中に核酸系旨味成分であるGMPが多く残る結果であった.これらの実験より,食品の違いにより同じ加熱方法でもプリン体の溶出や分解に違いがあることが示された.高尿酸血症患者は,鶏肉を食べる時は湯煎や電子レンジで茹でて,尿酸値を上げやすい肉中のプリン体であるHX類を少なくすることを推奨する.

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© 2018 一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会
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