痛風と核酸代謝
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悪性リンパ腫患者におけるCHOP療法後早期の尿酸動態
高木 和貴津谷 寛稲井 邦博今村 信中村 徹上田 孝典
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2003 年 27 巻 1 号 p. 11-18

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抄録

造血器悪性腫瘍患者では抗腫瘍性化学療法直後の過剰な尿酸産生に引き続いて,逆に血清尿酸値が低下する例が認められることから,化学療法後早期に尿酸代謝動態はダイナミックに変化していることが想定される.しかしこの時期の尿酸代謝動態は原疾患に対する治療や対症的に投与された薬剤の影響や輸液など,尿酸代謝に影響を及ぼす多くの因子が存在するためこれまであまり検討されていない.
抗腫瘍性化学療法が血清尿酸値や体内尿酸動態に影響を及ぼす因子を明らかにすることを目的とし,全身状態が保たれており輸液などの補助療法が行われていない, 非ホジキンリンパ腫患者20例に施行されたCHOP(cyclophoshamide,doxorubicin,vincristine,prednisolone)療法前後での血清尿酸値など血中および尿中生化学パラメーター値を抽出し, 化学療法が血清尿酸値に影響を及ぼし得るかレトロスペクティブに解析した.CHOP療法後早期においては腫瘍融解による過剰な尿酸産生と,それを上回る腎からの著しい尿酸排泄促進が原因となり,血清尿酸値は有意に低下した.化学療法後の尿酸排泄促進の原因として,尿中NAG濃度が有意に増加したことや化学療法後に尿量が増加傾向であったことから,薬剤による尿細管障害が関与している可能性が予想された. CHOP 療法後約1 週間で血清尿酸値が正常もしくは低下した時期においても,尿中尿酸排泄量はCHOP療法前に比べて有意に増加していた.抗腫瘍性化学療法後の尿路管理は血清尿酸値のモニタリングのみでは不充分であり,尿中尿酸排泄量がより重要である.

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© 一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会
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