痛風と尿酸・核酸
Online ISSN : 2435-0095
原著 2
尿酸代謝と血圧値に関するウロモジュリン遺伝子多型の相関解析
此下 忠志古谷 真知佐藤 さつき銭丸 康夫藤井 美紀牧野 耕和小野江 為人
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2020 年 44 巻 1 号 p. 23-31

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抄録

高尿酸血症は動脈硬化性疾患としての心腎血管病発症の危険因子と考えられており,血清尿酸値を規定する各種の遺伝子が順次明らかにされている.一方ウロモジュリン(UMOD)遺伝子は家族性若年性高尿酸血症性腎症の原因となることが知られ,さらに近年のGWASの成績などから高血圧や慢性腎臓病の発症・進展に関わることが示されている.しかしながら当該遺伝子の尿酸代謝や血圧値に対する影響については詳細な解析がなされていない.そこでUMOD遺伝子の多型により,尿酸代謝や血圧値に差異が生じるという作業仮説を検証した.5%の有意水準で80%の検出力を得るために約900例が必要と算出された.そこで,対象は各種生活習慣病のため当院を受診した連続924症例とした.末梢白血球よりDNAを抽出し,リアルタイムPCRシステムを用いUMOD遺伝子多型,rs4293393について解析し,血清尿酸値(sUA),尿中尿酸排泄量(uUA/uCr),尿中尿酸排泄分画(FEUA),血圧値,腎機能検査成績等との相関について解析した.遺伝子多型の解析結果は,CC(2例),CT(72例),TT(850例)であった.そこで主としてCC/CT群(74例)とTT群(850例)とによる分散分析とした.血清尿酸値(mg/dl)は以下のとおり: CC/CT群 4.74±1.45, TT群 5.23±1.53(p=0.009).このようにTアレルホモ接合体で血清尿酸値が有意に高値であることが判明した.一方,各種尿酸代謝関連指数の成績は以下のとおり: uUA/uCr; CC/CT群 0.55±0.15, TT群 0.56±0.20(p=0.59),FEUA; CC/CT群 10.2±8.8, TT群 8.2±3.6(p=0.0028). 血圧値の成績は以下のとおり: SBP; CC/CT群 138±21, TT群 146±24(p=0.012),DBP; CC/CT群 82±15, TT群 86±15(p=0.014).UMODのrs4293393多型により尿酸排泄率が規定され血清値に反映されることが明らかとなり,その尿酸値の高い遺伝的体質の群で血圧が高値となることが明らかとなった.以上のとおりメンデルランダム化法の概念に則れば,尿酸代謝の変化が血圧値に関係することが示され,ひいては腎障害に関与する可能性が示唆された.

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© 2020 一般社団法人日本痛風・尿酸核酸学会
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