痛風と尿酸・核酸
Online ISSN : 2435-0095
総説 2
高尿酸血症・痛風の病因の進化医学的考察とそれに基づく予防策 (続報)
瀨山 一正下岡 里英野村 希代子髙川(神原) 彩
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2020 年 44 巻 1 号 p. 7-14

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抄録

進化医学的考察から,現代人の遺伝子に組み込まれている遺伝情報は,ヒトの進化の過程での食も含めた生活習慣情報を基に構成されていると考えられている.これに対して産業革命以降の現代人の生活習慣は大きく変わった.食材構成の変化は,多岐にわたるが,主な変化は,植物性食材(野菜・果物)を減らして,その代わりに糖質と脂質(特に中性脂肪)を増やしている事である.そのため,現代食の代謝後に生じる体内での生理学的生化学的変化が,遺伝子に組み込まれている旧石器時代までの食の代謝後に生じる変化情報と乖離する.その結果,尿酸代謝に関しては以下のような影響が出る.現代食摂取後には,1)植物性食品の摂取を減らしたため,体内でのアルカリ成分の生成が減り,尿が酸性化する.2)エネルギーと栄養の供給過剰を起こし,小胞体ストレス反応を惹起する.

尿酸代謝に関係した小胞体ストレス反応は,インスリン抵抗性を生じることである.その為持続的な高インスリン血症となり尿酸の尿への排泄を減少させる.また,過剰なフルクトース代謝によりATP過剰消費により尿酸の新規生成増を齎すと共に脂肪酸の新規生成を増やし肥満による炎症反応の強化が起こると考えられている.この提案では,1)植物性食品の摂取を増やして尿のアルカリ化を計る.目標とする尿pHの値は,6.45とする.2)尿酸生成を増やし,小胞体ストレス反応を促進する食品群(主に糖質と脂質)の摂取量を抑制して尿酸排泄を促進することで,前回提案した食の介入効果が一層有効になると考えられるので新たな食介入策を提案する.

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© 2020 一般社団法人日本痛風・尿酸核酸学会
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