2022 年 46 巻 1 号 p. 15-22
尿酸値は男性に比して女性で有意に低く,これは主に女性ホルモンの排泄亢進作用に依るものとされる.この女性ホルモンの影響が著減した年齢層においては尿酸値の男女差が縮小することが知られている.今回我々は内科外来通院患者の尿酸排泄の男女差を50歳以上男性(男性群n=26)と閉経後女性(女性群n=31)において後ろ向きにデータを収集し比較検討した.結果,この年齢層において血清尿酸値の男女差の有意差は消失していた(男性群5.3±1.1mg/dl,女性群4.8±1.2mg/dl,p=0.110)が,尿酸排泄は閉経後でも女性が有意に多い(尿中尿酸/クレアチニン比;男性群0.47±0.13,女性群0.69±0.23,p<0.001,FEUA;男性群7.7±2.6%,女性群9.7±3.2%,p=0.018)ことが確認された.この尿中尿酸/クレアチニン比は男女ともに推定塩分摂取量と正の相関(男性R2=0.485,p<0.001,女性R2=0.521,p<0.001)を示していたが,この傾きは女性の方が強かった.閉経後女性において塩分摂取により尿酸排泄が亢進し,血清尿酸値が低値である症例の存在がみられた.このことは,女性で心血管イベントリスクが最小を示す尿酸値が男性よりも低くなるという現象を説明しうる仮説の1つであると考えられる.