2023 年 47 巻 1 号 p. 19-27
母乳は,プリン体としてmicroRNAなどの核酸,ヌクレオチド,ヌクレオシド,尿酸を含んでいることが報告されている.特に,母乳は牛乳に比べて,多くの遊離ヌクレオチドを含んでおり,また,母乳中のヌクレオチドは消化管の免疫細胞を活性化する効果を有する準必須栄養素として,育児用調製ミルクへのヌクレオチドの添加が推奨されている.一方で,哺乳類の乳汁中にはキサンチンオキシダーゼが含まれており,生成物の尿酸が多く含まれていることが報告されているが,腸管における尿酸の明確な生理機能は見いだされておらず,乳汁中およびその製品中の尿酸の含有量についての報告は少ない.本研究では母乳あるいは育児用調製ミルク(粉ミルク,液体ミルク,固形ミルク)中における尿酸とその前駆物質であるプリン体(ヌクレオチド,ヌクレオシド,塩基)の含有量を明らかにすることを目的とした.結果として,ヌクレオチドは母乳よりも育児用調製ミルクに多く,製造中に分解されることなく,含有することが明らかになった.育児用調製ミルクと母乳ともに,他のプリン体分子種よりも比較的多く尿酸を含有しており,母乳の方が有意に多いことが明らかになった.ヌクレオチドのみではなく,各プリン体の腸管での機能も明らかになりつつあることから,本研究結果は,乳児期における人工栄養の組成を考える際に有用な情報となる.