2024 年 48 巻 1 号 p. 41-46
目的:痛風・高尿酸血症治療の地域差についてはこれまで十分に検討されていない.本研究では,厚生労働省公表のレセプト情報によるNational Data Base(NDB)データを基に算出された,性・年齢調整標準化レセプト出現比Standardized claim-data ratio(SCR)スコアを用いて,痛風治療薬の都道府県別使用状況を検討した.
方法:2020年のNDBから算出されたSCRスコア(東北大学 公共健康医学講座 医療管理学分野作成)を指標として,痛風治療薬全体と各薬剤の都道府県別使用状況を比較した.
結果:痛風治療薬全体のSCRスコアは高い順から,高知(SCRスコア126.9),大分(115.4),佐賀(114.5),低い順から富山(82.4),埼玉(86.8),千葉(87.3)と地域差がみられた.痛風治療薬全体のSCRスコアと有意な相関を示した薬剤は,相関係数の高い順から,フェブキソスタット(相関係数r=0.91),アロプリノール(r=0.60),コルヒチン(r=0.57),クエン酸カリウム/クエン酸ナトリウム水和物(r=0.31)であった.コルヒチンのSCRスコアは高い順から,高知(SCRスコア 175.8),鹿児島(150.9),宮崎(142.0),低い順から秋田(60.0),滋賀(66.9),鳥取(67.3)であった.無症候性高尿酸血症に対する治療の度合いをある程度反映すると考えられる痛風治療薬全体/コルヒチン使用スコアの比率は高い順から,秋田(1.69),鳥取(1.55),静岡(1.47),低い順から沖縄(0.70),鹿児島(0.72),高知(0.72)であった.各薬剤間のSCRスコアが有意な相関を示した薬剤の組み合わせは,コルヒチンとフェブキソスタット・アロプリノール,フェブキソスタットとドチヌラド,クエン酸カリウム/クエン酸ナトリウム水和物とベンズブロマロンであった.
考察:痛風治療薬使用のSCRスコアは地域によって異なり,西日本で高い傾向にあった.また,痛風治療薬全体/コルヒチン使用のSCRスコアの比率は地域差が大きかったことから,無症候性高尿酸血症に対する治療状況も地域によって大きく異なる可能性が示唆された.また,各薬剤のSCRスコアでは特定の薬剤間で有意な相関を示したことから,よく用いられる薬剤の組み合わせパターンの存在が示唆された.
結論:痛風治療薬の使用は都道府県によって差があることから,地域の状況に応じて,痛風・高尿酸血症治療の均霑化を進める必要があると考えられた.