抄録
オーチャードグラス主体の草地にホルスタイン種去勢牛を放牧した場合において,実際に採食される牧草の化学組成の測定,および,採食草の化学組成と採食量の関係を求める目的で本実験を実施した。放牧牛の乾物採食量は刈取法によって測定した。採食草の化学組成はプロテクトケージ内の全草と放牧後の残食草の化学組成の差から求めた。採食草は生草に比して,粗蛋白質量と粗脂肪量が高く(P<0.01,P<0.05),NFE量は低かった(P<0.01)。採食草と全草の全ての組成量間に有意な正の相関が認められた(P<0.01)。これらの結果は去勢牛によって採食される草採食草と全の化学組成は草地の草のその組成と異なるが,草地の草の化学組成に影響されることを示した。放牧去勢牛の乾物採食量は採食草の粗蛋白質量(r=-0.699),粗脂肪量(r=-0.690),粗灰分量(r=-0.517),CP/NFE比(r=-0.746)と有意な負の相関があり,採食草のNFE量と有意な正の相関(r=+0.629)があった。さらに,放牧牛の第一胃アンモニア濃度は乾物採食量(r=-0.581)および採食草のNFE量(r=-0.674)と有意な負の相関があり,採食草の粗蛋白質量(r=+0.659)およびCP/NFE比(r=+0.706)と有意な正の相関があった。これらの結果は,オーチャードグラス主体の草地に放牧した去勢牛の採食量は牧草の化学組成,特に粗蛋白質とNFE量に影響されることを示し,その第一胃アンモニア濃度は牧草のこの2成分量に影響を受けると共に採食量に影響を与える可能性のあることを示した。