日本草地学会誌
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牧草の定着に関する研究 : II.不耕起追播暖地型牧草の定着に及ぼすN施与効果
河野 憲治尾形 昭逸安藤 忠男
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1981 年 26 巻 4 号 p. 404-411

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抄録
イタリアンライグラス(Ir)草地に暖地型牧草を不耕起追播する場合,Irと数種暖地型牧草間で養分吸収競合の生じる時期と成分を推定,把握し,さらにその成分の補強による追播牧草の定着向上効果とそれら草種間差異を明らかにした。1.同一施肥,地温条件下でIr草地にローズグラス(Ro),シコクビェ(Am),ソルゴー(So),グリーンパニック(Gp),カラードギニアグラス(Cg),メヒシバ(Fg)を追播した場合,耕起区に対する割合で示される相対無機成分含有率は,各草種とも発芽後15日目まで特にNで低い値を示した。また相対N含有率はAm,Fg>So>Ro,Gp,Cgの順に小さい値を示した。このことから,前植生Irとの養分吸収競合は発芽後15日目まで主としてNで生じているものと推察された。また特に,Ro,Gp,Cgで吸収競合が著しいものと考えられた。2.Ir草地にAm,So,Roを追播した場合の施与Nの動態を^<15>Nを用いて追跡した結果,施与NはIrにも大きく吸収利用されており,追播牧草の施与Nの利用はAm>So>Roの順に大きい事が明らかとなった。さらにN吸収競合に強い草種は,根長/草丈比,根重/地上部重比が大きいなどの特徴を有することが明らかとなった。3.N施与を5段階に変え,Am,So,Roを不耕起追播したポット試験の結果,N施与は追播牧草とIrとのN吸収競合を軽減し,Am,So,Roの定着を向上させたが,過量のN施与は逆に各牧草の発芽定着率を著しく低下させた。4.N多施与した場合の発芽定着率の低下は主として表層土壌の高塩類濃度によるものと考えられた。また施与N源によって土壌塩類濃度は異なり,発芽定着率の低下は硫安よりも尿素で小であった。
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© 1981 著者
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