日本草地学会誌
Online ISSN : 2188-6555
Print ISSN : 0447-5933
ISSN-L : 0447-5933
ルーメン内微生物による牧草窒素の利用に関する研究 : 4.牧草から生成されたアンモニアの微生物による取り込みに対する牧草中窒素含量の影響
田野 仁柴田 章夫
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

1986 年 32 巻 2 号 p. 149-153

詳細
抄録
ルーメン内微生物の作用により牧草から生成されるアンモニア量とその取り込み量を,^<15>Nアンモニア追跡法を用いて非定常条件のもとにin vitroで推定し,これを窒素含量の異なる牧草について比較した。またアンモニア取り込みに対する炭水化物の影響についても検討した。実験1では,アルファルファ乾草を給与しているヤギより採取したルーメン搾汁に4種類の凍結乾燥イタリアンライグラス(N含量20.9,25.2,31.2および36.5mg/g)および(^<15>NH_4)_2SO_4溶液を加えて2時間培養した。その間に培養液中のアンモニア濃度は草中N含量に応じて13.7mg N/dlから37.2mg N/dlの範囲で増加したが,^<15>Nアンモニアの追跡により求めたアンモニアの実生成量はそれぞれ24.1mg N/dlから44.1mg N/dlの範囲であった。これら両者の差が微生物によるアンモニアの取り込み量と考えられるが,これを計算すると,草中N含量の増加につれてアンモニアの取り込み量は10.5mg N/dlから6,9mg N/dlの範囲で減少することがわかった。実験2では高N草で低N草よりアンモニア取り込みが少ないのは,草中に存在する非構造性炭水化物の量が少ないからではないかと考え,低N草(20.9mg N/g)と高N草(36.5mg N/g)にキシラン,コーンスターチおよびセロビオースをそれぞれ添加してルーメン搾汁と共に2時間培養し,アンモニアの取り込みに及ぼす添加炭水化物の影響を検討した。その結果,アンモニア利用に対するコーンスターチの添加効果はほとんどみられなかったが,キシランあるいはセロビオースでは添加効果がみられ,その効果はいずれも高N草の方が低N草より大きかった。これは,高N草の有効炭水化物含量が比較的少ないために炭水化物の添加効果が大きく表われたことを示し,実験1の知見を確認することができた。
著者関連情報
© 1986 著者
前の記事 次の記事
feedback
Top