抄録
リン酸製造過程の副産物であるリン酸石膏を用いた牧草のイオウ栄養の改善について,東北大学農学部附属農場内の造成3年目と造成13年目の採草地で検討をした。1.リン酸石膏の施用により牧草の乾物収量の増加が認められ,無施用区に対し造成3年目の圃場では120kg施用区で11%,600kg施用区で4%,また造成13年目の圃場では120kg施用区で12%,600kg施用区で9%の増加であった。2.無施用区のオーチャードグラスのイオウ含量は,造成3年目の圃場では0.09%,造成13年目の圃場では0.06%であり,肉用牛の飼養標準の0.1%を下回った。リン酸石膏の施用によりオーチャードグラスのイオウ含量は増加し,造成3年目の圃場で0.13%,造成13年目の圃場で0.10%と肉用牛の飼養標準の0.1%を上回り,家畜の栄養面からも改善が認められた。3.リン酸石膏施用により土壌中の可給態イオウ(造成13年目圃場)は,無施用区の34.3mg kg^<-1>に対しリン酸石膏120kg施用区で55.4,600kg施用区で100.1mg kg^<-1>と大きく増加した。以上の結果から,リン酸石膏はイオウの供給源として有効であることが明らかとなった。