地理学評論 Series A
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論説
ミネソタ州ツインシティ都市圏における非政府・非営利セクターによる難民への職住斡旋支援
小田 隆史
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2009 年 82 巻 5 号 p. 422-441

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抄録

本稿は,欧米都市社会における新自由主義的な政治経済政策の転換を背景に,NGO・NPOによる公益サービスが,都市の諸政策遂行に重要な役割を果たすようになった点に着目し,米国ミネソタ州ツインシティに流入した難民集団の定住過程を事例として,ホスト社会側のNPOによる,難民に対する職住斡旋支援とインナーシティ問題解決に向けた諸活動の実態を考察した.まず,統計分析の結果,インナーシティ問題や職住の空間的「ミスマッチ」が確認され,難民が,そうした都市問題に陥っている現状を明らかにした.また,支援活動を「郊外職住支援型」と「インナーシティ再活性化型」に分類して分析したところ,支援主体のNPOは,資金調達の柔軟性,現場との近接性,活動域の広範性等のNPOとしての特性を活かし,難民定住問題を都市貧困問題と読み替え,貧困層一般を対象とした制度や財源を利用しながら難民定住を支援していることが判明した.

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© 2009 社団法人日本地理学会
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