地理学評論 Series A
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論説
両大戦間期の貨物輸送における自動車の進出と国有鉄道の対応――大阪,神戸,京都を中心として――
森田 耕平
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2018 年 91 巻 6 号 p. 462-486

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抄録

本稿は京阪神3都市を中心とした貨物輸送を事例に,両大戦間期の国有鉄道と自動車の関係について,両者の攻防を軸に検討した.国有鉄道は主に50km程度までの輸送において貨物自動車の攻勢を受け,道路改良の早かった阪神間のように輸送量が大幅に減少する場合もあった.近距離を中心に貨物自動車の利用が広がった背景として,輸送の迅速性に加えて運賃の低廉性が重要であった.国有鉄道が従価等級制運賃をとる関係で,付加価値の高い雑貨や工業製品は貨物自動車への転移が生じやすかった.営業割引に制約の多い国有鉄道は,小運送業者の仕立てる小口混載を利用した小口雑貨類の間接的な運賃値下げを計画し,業者との連携の下に京阪神間で低廉な速達の取扱いを展開した.両大戦間期に実施された貨物自動車対抗策の基本方針(小口混載の奨励,運賃の特別割引,輸送時間の短縮)は,第二次世界大戦後の東海道を中心とした路線トラック対抗策で再現した.

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© 2018 社団法人日本地理学会
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