地理学評論
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姫川流域の一渓流の荒廃とその下流部に与える影響
町田 洋
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1964 年 37 巻 9 号 p. 477-487

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抄録

いわゆる荒廃河川の地形学的な意義を検討するために,長野県の姫川支流浦川を対象にして,過去およそ50年間にすすんだ侵蝕・堆積の過程と,砂礫供給源として下流に与える影響とを明らかにした。
1) 古い火山体の一部である浦川流域の稗田山では, 1911年8月巨大な地すべり性崩壊が発生し,崩壊物質は土石流の形で流下して,崩壊地直下から約6kmの区間の浦川谷を深く埋積し,姫川本流をせきとめた。 2) その後,斜面からの土石の流下が相対的に少なくなるにつれて,埋積谷は水流に刻まれ,段丘化した.下刻は下流部に生じた遷急点の後退という形式ばかりでなく,急傾斜の上流側からも始まり,次第に一様にすすめられた.河床の低下は上流部で100~50m, 中・下流部で30m内外に達した.開析の初期には下刻が急速にすすみ,その後側刻がすすんでいる. 3) 浦川におけるはげしい侵蝕の結果,搬出された多量の砂礫が合流点直下の姫川のポケットに堆積し,この部分の姫川の河床縦断形は浦川によってつり上げられた形となった. 4) 浦川合流点以下の姫川中流部の河床に堆積する砂礫の内容は,その供給源からみて, (a) 稗田山系, (b) 風吹岳系(ともに浦川から搬出される), (c) 姫川上流域系,にわけられる.それぞれの地域の砂礫流下率を,河床礫の岩質別分類を行なって試算すると, 41%, 26%, 33%となった.面積的には姫川上流域の1/21にすぎぬ小渓流浦川の荒廃渓流としての性格が示される.また,砂礫流下量の多い河川の砂礫は,広い流域から一様の割合で供給されるというよりも,ある限られた地域の異常に急速な侵蝕に由来する場合の多いことが示唆される.

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