地理学評論
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イングランド南部の鉄器時代における都市的集落の発生,分布およびその領域について
千田 稔
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1977 年 50 巻 5 号 p. 257-275

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抄録

都市的集落の発生は農業生産力の拡大に伴う社会的余剰の産出が契機になるといわれるが,イングランド南部においては,花粉分析の成果によれば鉄器時代に森林の開拓が見られ農業が進展したことが知られ,その時期に形成された高城 (Hillfort) という防御集落には都市的様相を認めることができる.この高城のうち15エーカー以上のものについては, 13km間隔の正六角形網の領域パターンを構成する中心集落として立地すると解釈でき,さらにこれらの高城群が直径60~80kmの円に包摂されるような領域を形成していたことが指摘される.この領域的規模は部族領域かあるいはそれを分割したものとしてあらわれるが,鉄器時代末期のoppidum (マチ)を中心集落とする領域形成にも継承され,さらにローマ支配時のキヴィタス (Civitas) の空間的広がりにおいても踏襲されるものである.こうした規則性を支える原理については,今後の検討の余地がある.

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