抄録
近畿三角帯の北西辺に沿う地質境界である有馬-高槻構造線のうちで,中・東部地域(大阪平野の北縁に沿う)について,断層変位地形を検証し,断層運動に関する考察を行なった.この地域の活断層は東西,または東北東-西南西の走向をもち,断層変位地形の相違から次の3つのタイプに分けることができる. 1) 段丘面・段丘崖を垂直・水平方向に変位させる. 2) 段丘面を切る細長い低地帯を形成する. 3) 山地内を走り山地内の河谷を右ずれ変位させる.
段丘面・段丘崖の変位量と形成年代の推定値より各断層の平均変位速度を求めた. 1) について,垂直方向に0.06~0.2m/103年,右ずれ方向に0.5~1.5m/103年, 2) について垂直方向に最大0.8m/103年の値が得られた.これらの活断層は,六甲山地の活断層とともに,西に開く細長いクサビ状の分布を示す一連の活断層系をなしている.そして,これらは第四紀後半の東西圧縮に対応していると考えて矛盾のない運動様式を示している.
東西性の地質境界に沿う活断層という共通点をもつ紀伊半島中・西部の中央構造線活断層系と比較を試みた.垂直・右ずれ変位とも中央構造線活断層系の平均変位速度が約2倍ほど大きい値を示し,活断層系の分布パターンは,調査地域の3)と類似している.