世界各国で生徒の「地理ばなれ」は関係者の大きな関心事である.これを打開するため西独では,従来の地誌的地理教育に不満や批判が60年代末より集中したことを一契機に,地域づくりへの主体的参加能力を養うという全く新たな理念から地理教育の抜本的改革がなされた.そこでは当時学界に定着しつつあった基礎的人間存在機能・経済地理学理論等の地域福祉的観点からの評価を中心に,これを計画ゲーム等新たな方法で授業展開することが図られた.教材化は,全連邦的組織RCFPが現場・大学研究者によって組織されてなされた.本改革が類似の合衆国HSGP等と異なるのは,地理学の計量・理論革命の流れに従属せず,地理教育の民主主義社会形成に果たす役割が常に自覚されていることで,この点より今日「参加」を重要な課題としているわが国の地域づくり運動にも大きな示唆を与えうるものとなっている.