地理学評論
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東急多摩田園都市における住宅地形成
松原 宏
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1982 年 55 巻 3 号 p. 165-183

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抄録

本稿では,私鉄資本による代表的な大規模住宅地開発である東急多摩田園都市をとりあげ,その形成過程や特徴に,開発主体である東急の動向がいかに具現化しているかをみた.その結果は以下の点に要約できる. (1) 東急主導の土地区画整理手法.この手法により東急は,少量で分散した土地買収状態でも,新線沿線の広域的開発を主導できた.しかも事業を代行することにより,新たに保留地を安価で大量に取得することが可能となった. (2) 人口定着策としての高密度開発.私鉄資本ゆえに新線の収益性を無視することはできない.そこで,東急は高密度開発を進めたが,一方で社会資本の不足を激化させることになった. (3) 遠隔地からの住宅地形成.東急は新線沿線各所に土地を所有していたため,地価上昇を見込んで遠隔地から分譲するという傾向がみられた. (4) アンバランスな土地利用の混在.東急は高級な一戸建住宅や分譲マンションを,地元地主は独身寮や賃貸マンションを建設したため,土地利用は無計画なものとなった.

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