地理学評論
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日立鉱工業地域における鉱山衰退に伴う鉱業労働者の対応
岩間 英夫
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1983 年 56 巻 12 号 p. 803-818

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抄録
本研究は,日立市を事例に,鉱工業地域においてその地域形成の原動力であった鉱業が衰退した場合,鉱業労働者はいかに対応するのか,また,その対応を規定する要因は何か,について考察した.
鉱業労働者のうち,中核的存在である管理・技術集団は,企業の撤:退に先駆けて社内の配置転換という形で他鉱山・エ場へ転出した。地元にとどまったのは,鉱工員からなる現業集団が主である.現業集団の中で,若年労働者は転職,社内の配置転換などの流動的対応を示した.一方,中高年労働者の場合は,定年や閉山まで残り,地元に再就職するという固定的対応であった.中高年労働者の再就職先は,工業,とくに日立製作所の中小下請工場,もしくは鉱業と類似した性格の素材工業に特色づけられる.中小下請工場や素材工業に規定される要因は,それらの仕事内容が鉱山時代の労働である肉体労働と単純機械を組み合わせた作業形態と共通するからである.また,工業以外の業種を含めると,鉱業と同じ現業という性格を有する職種への転換であった.
総じて,若年労働者ほど高度な異業種への対応が可能であり,中高年労働者になるにつれて,前職すなわち鉱業の性格に規定された職種への対応となる.
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