地理学評論
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秩父山地の化石周氷河斜面
清水 長正
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1983 年 56 巻 8 号 p. 521-534

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抄録

秩父山地の山稜部周辺には,凹凸が少なく平滑で,表層に岩塊が堆i積する岩塊斜面が発達する.岩塊斜面は,斜面型,分布高度,斜面堆積物(岩塊層)の層相,その上下に存在する火山灰などから,最終氷期に形成された化石周氷河斜面と推定される.
岩塊斜面の形成期は,雲取期(最終氷期前半期),金峰1期(最終氷期極相期),金峰II期(晩氷期)に区分される.岩塊層は,雲取期と金峰1期の間で,マトリックスを有する層からマトリックスを欠く層へと変化している.雲取期には,山地全域にわたって岩塊斜面が発達し,その下限は標高1,700~2,300mである.金峰11期には,おもに金峰山の2,300m以上の部分に小規模に岩塊斜面が発達していたにすぎない.これらの岩塊斜面の分布が示す地域を,その時期の周氷河極相地域と考えた.
現在,雲取期および金峰1期の岩塊斜面は亜高山針葉樹林に,金峰II期の岩塊斜面はおもにハイマツに,それぞれおおわれているYこのような岩塊斜面と植生との関係は,最終氷期から後氷期にかけて岩塊斜面が安定していくとともに,ハイマツ,亜高山針葉樹林の順に植生が侵入する経過を示すものと考えられる.

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