地理学評論 Ser. A
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札幌における積雪中の化学物質濃度の空間分布
鈴木 啓助
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1984 年 57 巻 5 号 p. 349-361

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抄録

札幌を中心とする地域において,積雪を採取・分析し,積雪中に含まれる各物質の起源および濃度の空間分布を検討した.積雪中に蓄積されたNa, Cl, Mg, Kは,ほとんどが海水を起源とするものである. SO4については,化石燃料の燃焼による都市起源の量が多い.
積雪中の海水起源物質濃度は,海岸近くで高く,内陸,特に調査地域の南西部で低い.積雪の密度も同じような分布傾向を示す.これらの分布傾向は,海水起源物質濃度の高いあられや雲粒付きの雪結晶が,平均風速の弱い南西域では,内陸まで運ばれにくいことに起因する.
積雪中の過剰SO4濃度は,都市の中心部で低く,中心部の南東域に帯状の高濃度の地域が分布する.一方,化石燃料の燃焼によって放出された大気中のSO2は,都市の中心部においては高濃度で,郊外になるに従い同心円的に減少する.この両者の分布の差異を生ずる要因は,冬の札幌ではヒート・アイランド循環が形成され,都市域で大気中に放出された硫黄酸化物が上昇流によって上空に運ばれ,おもに北西風時に降る雪に捕捉され,地表面に降下するためである.

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