地理学評論 Ser. A
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7月における華中の多雨・少雨に関する原因についての考察
岩崎 一孝
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1984 年 57 巻 6 号 p. 369-383

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抄録

本稿は,7月における華中の多雨・少雨の原因としての気流系モデルを提出することを目的とする.7月の東アジアの降水量分布には2種類の多雨帯が認められる.ひとつは前線帯の南偏・北偏に関係なく現われる華南の多雨帯であり,もうひとつは,前線帯の南偏・北偏に伴って,南北に出現位置が動く多雨帯である.華中の多雨・少雨は後者の多雨帯の位置と深く関係する.華中が多雨のとき,この多雨帯が華中から西日本にかけて現われる.前線帯はこのとき,華中から西日本にかけて走り,集中度は高い.華中が少雨のとき,この多雨帯は華北から朝鮮半島,日本列島にかけて現われる.前線帯も華北から朝鮮半島,,日本列島にかけて走り,集中度は低い.
前線帯の位置と中緯度偏西風,南西気流との対応関係について検討し,降水量分布と前線帯との関係と対比させて,次の気流系が推定された.華中が多雨となる場合は,中緯度偏西風が南北循環卓越型で,ヒマラヤ・チベット山塊東側に深いトラフをつくり,ここに湿潤な南西気流が侵入して,直接中緯度偏西風と収束する.これに対し,華中が少雨となる場合は,中緯度偏西風が東西循環卓越型で,ヒマラヤ・チベット山塊東側には浅いトラフしかつくらず,華中まで侵入しない.南西気流も直接華中に侵入せず,華中は亜熱帯高圧帯の沈降性の気流におおわれる.

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