地理学評論 Ser. A
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草地の熱収支と蒸発散
古藤田 一雄
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1984 年 57 巻 9 号 p. 611-627

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抄録

1981年12月1日から1982年11月30日までの1年間の観測値のうち,晴天日(曇天日を含む)を選び,草地における熱収支と蒸発散量の関係について解析をした.
ボーエン比は,夏・秋季は0.2近くの値をとり,湖沼や水田の値とほぼ同じであったが,冬季は1.5~2.0の値をとり,湖沼とは大きな相違をみせた.これは,冬季の地表面が乾燥したためと考えられる.日平均値による全短波放射束に対する正味放射束の直線回帰式を求めた結果,勾配の値0.72,切片の値一52.8が得られた.しかし,年変化には大きなヒステリシスが認められた.全短波放射量に対する正味放射量の年間総量の割合は39.4%となった.冬季の12月~2月および春季の4月は,移流等による影響が地表面の熱収支に大きな影響を与えることが認められた.しかし,日平均値をとった場合,5月~11月の夏・秋季には,この影響は他の熱収支項に比べて無視しうる程度に小さいことがわかった.夜間における潜熱交換は,草地においては,地面蒸発が大きく関与し,とくに夏季は凝結による露の生成量を上まわって蒸発が卓越することがわかった.この結果,夜間の正味の凝結量は,年間総量でわずか4mm year-1程度にしかならなかった.

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