地理学評論 Ser. A
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豪雨時の表層土壌中の熱環境変化
佐倉 保夫
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1984 年 57 巻 9 号 p. 628-638

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抄録

豪雨時の表層地中の熱環境に着目して,地温変化と降雨浸透にともなう土壌水の移動機構の関係を考察した.その結果,表層土壌中のさまざまな地温変化は,土壌の保水形態にもとづく水の移動形態を反映したものであることが明らかになってきた.すなわち,地表付近の懸垂水帯では,水は土粒子間の接合部に存在する.新たに入った水は,土粒子表面を伝わって降下する移動形態をとる.そのため,地温変化は,降雨発生により生じたぬれ前線の移動にともなって下方へ伝達される.一方,地下水面上方の毛管水帯の水は,毛管力と重力の釣り合いで,平衡水分分布を形成する.そこへぬれ前線が到達すると,圧力平衡は崩れて土壌水の一斉移動が始まる.その時,地温勾配が形成されていると,土壌水の一斉移動に対応して,地温プロファイルは,初期の地温勾配を維持しつつ下方へ移動する.したがって, 1~2mの深度でも,毛管水帯中であれば,その地温変化は急激で,かつ大きいことが土壌水の移動機構の解明により明らかになった.

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