地理学評論 Ser. A
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赤石山脈主稜線部における線状凹地の分布と岩石物性
松岡 憲知
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1985 年 58 巻 7 号 p. 411-427

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抄録

赤石山脈の主稜線部は,日本の山地の中で線状凹地の分布が最も多い地域に属する.本稿では,線状凹地の分布特性を,稜線周辺の応力場と赤石山脈を構成する堆積岩の物性との関連において考察した.
線状凹地の出現頻度は,地層の走向に平行に延びる稜線の周辺,しかも頁岩からなる地域で高い.多くの線状凹地は,正断層変位によって形成された断層地形であると考えられる.その断層面はしばしば層理面に一致する.また,正断層は斜面の最大傾斜方向に働く引張応力によって発生したと推定される.構成岩石の力学的試験によって,頁岩の層理面では引張強度が小さいために,引張破壊が容易に発生することが明らかになった.このような局地的応力場と岩石物性との関係によって,頁岩からなる稜線周辺で,しかも層理面に沿って出現頻度が高いという線状凹地の分布特性が生じたものと考えられる.

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