抄録
活断層の活動度を評価するためには,ネットスリップの速度を求める必要がある.その場合,ネットスリップ速度の鉛直成分(鉛直スリップ速度)は,変位地形の簡易測量から容易に求められるが,水平成分(水平スリップ速度)を求めるのは,一般に困難である.本稿では,水平スリップの速度を地形学的証拠(段丘崖の方向とオフセットの速さ)から求める方法を示し,その方法を伊那盆地北部の活断層に適用した.結果として,従来大部分がB級の活断層と認定されていた天竜川右岸の各断層は,いずれも鉛直スリップの速さに比べて水平スリップの速さが大きい低角逆断層であり, A級の活動度を持つことが示された.