地理学評論 Ser. A
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北海道移民にみる連鎖移住の構造
美唄市山形地区を例に
平井 松午
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1988 年 61 巻 10 号 p. 727-746

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抄録

近年の移民研究では,移住者の特性や移住意志決定プロセス,さらには移動流の方向などを明らかにするため,移民研究を人口移動研究の一環として捉え,移民の輩出過程と定着過程とにおける一連の移住過程が検討されてきている。本稿もかかる観点から,山形県出身者の多い美唄市西美唄町山形地区を例に,北海道農業移民の輩出・定着過程について報告しようとするものである.
山形地区の開拓は,明治27(1894)年,山形県村山地方の零細農民が組織した山形団体という農民移住団体の入植によって始まった.その後,自作入植者の単独移住によって開拓地の外延的拡大が行なわれるとともに,山形地区では畑作農業期に農民層分解がみられ,一部上層農の出現をみた.大正10(1921)年に山形地区が水田化されると,上層農はその労働力の担い手として小作人や奉公人を入植させた.こうした後続入植者の多くは,地縁的・血縁的なネットワークを通じての連鎖移住による同郷移住者に求められ,このことが山形地区において「同郷性」を維持してきた理由と考えられる.

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