地理学評論 Ser. A
Online ISSN : 2185-1735
Print ISSN : 0016-7444
ISSN-L : 0016-7444
丘陵地源流域における降雨による流量のふたつのピークについて
日原 高志鈴木 啓助
著者情報
ジャーナル フリー

1988 年 61 巻 11 号 p. 804-815

詳細
抄録

多摩丘陵の源流域において降雨流出の観測を行ない,一雨に対するふたつの流量のピークについて,それらの量的・時間的関係の検討,および第2の流量のピークの形成機構についての考察を行なった.その結果,次のことが明らかになった.(1)降雨中の第1の流量のピークは,流域下流部の水みち近傍の谷底地下水の流出,飽和域への直接降雨による飽和地表流,一時的に浸透し流出する浅い地中流により形成される.(2)降雨終了後の第2の流量のピークは,谷頭平底に形成された地下水面の高まりが下流方向へ移動し,地表面に達した地点で地表流となり形成されたものと考えられる.(3)第2のピーク流量形成時の流域中・下流部からの流出量は少なく,この部分の側方斜面が第2のピーク流量に果たす役割は小さい.(4)重回帰分析によって,第2のピーク流量の変動の91%,ふたつのピーク流量の時間間隔の変動の81%が,・降水量と初期流量によって説明される.(5)同程度の降雨では,初期流量とふたつのピーク流量の時間間隔との問に明瞭な相関関係が認められる.

著者関連情報
© 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top