1989 年 62 巻 11 号 p. 776-791
温帯低気圧通過時の一時間降水強度に現われる地域性と日本列島内の地形起伏との関係を解析した.一時間降水量分布に対してスケールの異なる空間平均をほどこし, 3種類のメッシュデータを作成した.半径約50km以上の空間平均により数10kmオーダーの局地的な空間変動は平均化され,低気圧の東進に伴う降水強度の弱い地域の進行,および南岸に卓越する100kmスケールの多降水量域が明らかとなった.各メッシュデータ間の差の分布は,それぞれ約50km・約100kmの空間スケールであった.前者の分布と20kmの谷埋め法による切峰面図の600m以上の山岳域とはよい対応をみた.一方,後者の分布は南岸の多降水域および南に豊後・紀伊水道や伊勢湾が開けた地域に出現した.これらの空間スケールの違う偏差分布より,総降水量50-100mm程度の温帯低気圧時にも,各山岳域による地形性降水と,水蒸気流入を決定する水道や大山脈が一時間降水分布に大きく影響を与えていることが明らかとなった.