地理学評論 Ser. A
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日本の海岸砂丘
成瀬 敏郎
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1989 年 62 巻 2 号 p. 129-144

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抄録

最終氷期以降に形成された日本列島の海岸砂丘の地形,形成期および古土壌の生成環境・母材の起源について考察した.
日本列島は,太平洋岸の新・旧砂丘分布域と,日本海および東シナ海沿岸の新・旧・古砂丘分布域に二分され,砂丘砂は非石灰質砂,石灰質砂,火山灰質砂などからなる.完新世の砂丘は,約6,000y. B. P.の海面高頂期に続く小海退初期に形成された後,海水準微変動に伴って並列型,複合型,累積型の砂丘列が形成された. 2,000y. B. P.以降になると地形改変の進行につれて流出土砂が増大し,それまでの砂丘形成の図式が変化し,とくに藩政時代から砂丘の大型化が顕著になった.この時期に形成された二次砂丘と風食窪の長軸方向は,現在の卓越風向 (ベクトル)とほぼ一致する.
最終氷期の古砂丘は, 7万, 5万, 3万, 1.8万y. B. P.に形成され,このうち7万y. B. P.と5万y. B. P.の古砂丘は広域に分布する.南西諸島のこう (膠)結砂丘も同じく氷期に形成されている.現在のクロスナの生成は,後浜からの飛砂をくい止める一次砂丘背後の植生で被われた砂丘上でみられる.クロスナや古土壌中の細粒物質は,中国大陸や陸化した大陸棚,砂浜起源の風成塵が主なものである.

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