地理学評論 Ser. A
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東京都千代田区神田地区における人口減少に伴うコミュニティの変容
平 篤志
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1990 年 63 巻 11 号 p. 701-721

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抄録

本稿は人口の減少に伴うコミュニティの変容を明らかにすることを目的とし,東京都千代田区神田地区を事例として考察した.コミュニティの範囲は,町会の範囲を基本とし,小学校区を高次の単位とした.
1950年代半ばに始まった人口の減少により,都心地区の公立小学校では空き教室の増加が問題となっている.その解決策として,一般への校舎の開放をとおして施設の有効利用を図る小学校のコミュニティセンター化が徐々に進められている.一方,居住者の主要な組織である町会は,公立小学校と同様に規模の縮小を余儀なくされている.地区からの転出者は主として若年層であり,居住者および役員の高齢化が進行している.町会活動では氏神の祭礼が中心となっており,居住者の連帯感を維持する重要な役割を果たしているが,人員の確保が困難になり始めている。居住者および組織の変容と同時に,居住施設の改変に伴い景観が改変されつつある.具体的には住居兼用の一般商店を個人規模で商業ビルに改築する例が事例地区において顕著にみられた.町会を基礎としてきたコミュニティは,今後町会相互の結びつきの強化と小学校を核とした新たな組織の成立により,コミュニティそのものの範囲が拡大していくことが予想される.

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